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大会の持ちかたについての議論の提案

日本生態学会第47回大会総会(2000年 3月 25日)での議決

日本生態学会和文誌 50(2) 169-170.


下記の提案に従い,増加する一方の大会参加者に対応できるよう大会を改革するため 全国大会検討委員会を作ること,また,その人選は,運営のノウハウを継続するため 学会事務局に一任することが議決された.

大会の持ちかたについての議論の提案

日本生態学会の大会は参加者が増えて,以前とは質的にも変化してきている.生態学会の異なる分野での研究活動とその成果に対する会員相互の理解をすすめ学会内での分野の多様性を維持するためにには,大会のあり方を改革することが必要になったと思う.以下に議論のたたき台となる意見を述べたい.

(1)大会開催の事務量の増大

大会が大きくなったために開催の事務負担などが際だって大きくなった.負担を減らし中身の充実に向けて貰えるようにさまざまな工夫をする必要がある.たとえば分子生物学会など大きな規模の学会では事務を業者に委託している.その可能性については,すでに常任委員会で見積りをとって検討しているが,一部でも試行してみてはどうか.

また,プログラム編成の苦労を考えると,大会の期間を延ばすことや初日の各種委員会開催時間に自由集会を平行して開催することも考えられる.

(2)シンポジウムについて

生態学会大会が大きくなったために,異なる分野の会員には生態学の他分野でどのような研究の動きがあるのかについて把握することが困難になっている.シンポジウムなどをいろいろな分野について準備し,自分の専門でない分野での話題や議論が吸収できるようにする必要がある.

また大会の参加者そのものは増えているものの,発表される分野はむしろ縮小しているのではないかと感じている.たとえば海洋生態学や微生物生態学,Biogeochemical cycle,化学生態学などが少ないと思う.それらの分野の研究者が生態学会に出席し続けてもらえるよう,学会内の分野の多様性を維持するよう努力する必要がある.

現在,生態学会会員が多数参加し大規模な研究費によって運営されている研究プロジェクト(特定領域,未来開拓,CRESTなど)が多数行われているが,それらの進行状況や研究成果については,学会の大会でのシンポジウムなどを通じて会員に伝えていただくことが必要である.

たとえば広島大会では13個のシンポジウムが同時平行で行なわれた.保全生態学関連の話題,それに景観生態学関連のテーマが多く出され,会員の関心の強さを示すが,それらが互いに重なっていた.シンポジウムのテーマを整理する必要がある.またシンポジウムとして提案されて来なかった分野については,大会開催側からシンポジウム企画を依頼することによって,分野のバランスをとり生態学会の研究分野の多様性を積極的に維持する必要がある.

そのためシンポジウムの数を増やし,またシンポジウムの時間帯は1つに限らずにいくつかを確保してはどうか.そうすると一般講演の時間と重なることになるが,プログラム編成上の困難を考えて,「シンポジウムの発表者・オーガナイザーには口頭の一般講演とは原則として重複できない(ただしポスター発表はできる)」としてもよい.

(3)ワークショップやテーマ別セッションを設ける

シンポジウムに加えて,ワークショップ(仮称)を設けて,講演者の数人分はあらかじめ決めるが他の数人分については,一般公募する.あらかじめテーマとオーガナイザーだけをきめ,講演者については少なくとも一部をオープンにし,一般講演とともに申し込まれた希望者の中からオーガナイザーがいくつかを選択して組む.一般講演の応募用紙の提出時期に,シンポジウムの名前と趣旨説明を加え,それぞれのセッションに対する会員の希望者を募り,それらの内から適切と考えられる数人分については拾い上げる.これは,国際会議および大規模の国内学会では広く試みられ,生態学会でも釧路大会で採用して成功したやり方である.

テーマ別セッションを設けて,オーガナイザーが一般講演の申し込みをみてから,いくつかをまとめる形でとりまとめるのもよい(林学会では数年前から行なわれている).

(4)一般講演における口頭とポスターのバランスにてついて

シンポジウムを増やし,一般講演をポスターを中心にしてという意見が以前からあり,数年来の常任委員会でもそのような意見が大勢であった.ポスター発表には,ポテンシャルには(並列会場の多い口頭一般講演とちがって)全員に見てもらえる可能性があるというメリットがある.

しかし,一般講演の口頭発表は大学院生への教育上の効果が期待でき,また分野によってはポスター発表よりも望ましいこともあるので,一般講演をすべてポスターに限らず,希望者には一般講演の口頭発表ができるようなシステムを残す方が望ましいと私は考える.

(5)自由集会について

自由集会は生態学会大会とは別の関連集会に相当するものである.大学院生などの若手でも自分達で研究会を企画する経験が持てる.それらのうちうまく成功したものは新しい分野を形作ってきたという意味で,自由集会はここ20年間の生態学会にとっては大変重要な機能を果たしてきたし,若手を学会に惹きつける意味でも重要である.私は現在の形で続けることに賛成である.しかしラウンドテーブルといった形にして,大会プログラムに組み込む可能性は検討してもよい.

(6)大会の持ち方には一部に学会が関与する

大会の持ちかたを改善すべきだという意見が,将来計画専門委員会・常任委員会などで毎年出るにもかかわらず,毎回の大会の組立はほとんど変更されていない.前回の学会の反省点について継続性を保証するシステムが弱い.私は,学会開催のありかたは開催地の準備委員会に最終的には任せるべきだと考えているが,生態学会全体としての問題点やそれらを解決するための大会の持ち方,プログラム編成に関する意見などが準備委員会にうまく伝わり反映されるようにシステムを整える必要があると思う.

具体的には年大会のあり方を検討する委員会を全国委員会の下に設置することを提案したい.大会の準備に時間がかかることを考えると2回程度先の大会開催予定地の方にもこの議論に加わっていただくことが望ましい.

また大会開催マニュアルが,次回の大会開催準備委員会に確実に伝わるよう,常任委員会の中に大会担当委員を置いて対応するのがよい.

文責:巌佐庸


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