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宴のあとに:学会が終わってからやること

2002-02-22

学会の大会では,自分の研究を発表し,人の発表を聞き,情報を仕入れ,議論し, いろいろ刺激を受けることができます. 大会が終わるころには,やる気レベルが高まった一種のハイな状態になります. けれども,学会から帰ってそれまでの日常生活に戻るとともに,やる気レベルも しだいに減衰していきます

学会で得た経験とやる気をその後に生かすために, 学会から帰ったらまずやるべきことをメモしてみました.


レポートを書く

やる気と記憶が失われないうちに簡単なレポートを書きます. 頭を整理することと,せっかくの経験とアイデアを忘れずに残すことが 目的です.

学会から帰って早々は,一種の虚脱状態だったり,時には自己嫌悪に苦しんで たりして,とても学会を振り返る気分にならない場合もあります. それでもめげずにとにかく書いてみます.書くことで乗り越えられることも あります.

たとえばこんなことを書いておきます.

書いたレポートをあとで読み直すと,自分の忘却力に驚きます. それとともに,一度は消えてしまったやる気とアイデアが多少とも 蘇ってきます.これが学会レポートの一番の効用です.

このレポートは自分用です.人に見せるつもりで書くと, 気恥ずかしいこと(○○さんに誉められて嬉しかった,など), 瑣末かもしれないこと,批判的なことなどが書きにくくなりますから. 人目を気にせず,少々饒舌に書いたほうが, あとで読んでやる気をかき立てるには効果的なようです.

レポートを書くといっても,中身がびっしりと詰まった3日間なり4日間 のことをあとから思い出すのは大変です.学会期間中にメモを書き留めて おくとよいです.きちんとノートに書くもよし,プログラムや要旨集の空白に 書き込むもよし.とにかく記憶の手掛かりを残しておくのと何もないのとでは 大違いです.

※この文章を読んだ村岡裕由さん(岐阜大学)から,大学院の学生なら指導教官に 見せるレポートも書くとよかろうとのご意見をいただきました. 特に研究を始めて日が浅い場合,先輩たちの意見の妥当性をじゅうぶんに 吟味しないままに,鵜呑みにして突っ走ってしまう危険もある, 学会でもらったコメントを参考に考えた「新しい展開・方針」の妥当性を 見極めるためにも,レポートをもとにして研究室で「宴の後の研究計画セミナー」 をやったらどうだろうか,とのコメントです. これはよいアイデアだと思いました.


やる気になったことを「実体化」する

学会中の高揚した気分のなかで,あれをやってみよう,これもやらなきゃ, と思うことがあります.思ったことは,なるべく早いうちに, ちょっとでもいいから手をつけます.

論文をまとめようと思ったのなら論文の構成のメモなどを書いてみる. 実験や調査をしようと思ったのなら計画を書いてみる. 何かを勉強しようと思ったのならまず文献を手に入れる. 徒党を組んでなにかをしようと思ったのなら組みたい人に声をかけてみる. とにかく思いつきを少しでも「実体化」してしまうとよいようです.

ハイになってやる気になったけど,あとで落ち着いて考えてみたら, 最初に思ったほどの価値はなかったことに気がつくかもしれません. そうと気がついたならやめればよい. また,冷静に考えると新しいことをやる時間がない場合もあるでしょう. それなら計画だけでも立ててから寝かせておけばよい. 恐れるべきは,せっかくのアイデアがよく吟味されないままに どこかに消えてしまうことです. 頭の中に置いておくだけだとすぐに風化します. なんらかの形にすることで風化を避けることができます.


学会中に約束したことのフォローをする

学会中に,帰ったら別刷り送ります,というような約束をすることがあります. こうした約束は忘れないようにメモしておいて,帰ったらさっさと送ります. 時間がたつとおっくうになりますから.

とくに今まで面識がなかった相手の場合,こうしたフォローは, あらたにできたつながりをより強固なものにするのに役に立ちます.

なかには「お近くにお越しの際はぜひ拙宅に…」みたいなお愛想で 別刷り欲しいと言ってくれただけの人もいるかもしれません. でも,お愛想を真に受けて家に押しかけられたら慌てますが, お愛想を真に受けて別刷り送られてもほとんど実害はありません. 遠慮なく送ります.

共同研究の約束をした場合も,帰ってからなるべく早く連絡をとれば, その場での口約束ではなくて本気だよ,というメッセージになります.

謝辞

本文書にご意見をいただいた村岡裕由さん(岐阜大学)に感謝します.


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