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2002 FIFA ワールドカップの得点とポアソン分布

2002-06-17

交通事故のように,

という条件が満たされると,ある期間やサンプル集団のなかに含まれる事象の回数は, ポアソン分布と呼ばれる分布に従います. 詳しくは,たとえば青木繁伸さん(群馬大学)の 統計学のページ のなかの ポアソン分布のところ などを参照してください.

サッカーの得点はかなり低い確率で起こることがらです.また, ひょっとしたら点が入るかもしれない状況は頻繁にあります. 実力差が大きいチームの対戦なら,強いチームの側に集中して点が入るから, 一度点が入ったらそのあとも続けてそのチームが点を取りそうですが, 十分に実力が接近したチーム間の対戦なら,各得点はたがいに独立だと考えても 大きな間違いはなさそうです.

2002年に開催された FIFAワールドカップの一次リーグの全 48試合について, 1チームがあげた得点を調べてみました.48試合×2チームで96のデータになります. 得点の頻度分布にポアソン分布をあてはめてみたのが下の図です.


実際の頻度が黒い四角,ポアソン分布をあてはめて計算した頻度分布が赤丸です. 分布の形を決めるパラメータである平均生起確率には平均得点(1.344)を使ってます. 分布の形はおそろしいほどよく合っています.


1試合の得点の確率分布がポアソン分布で近似できるとすると, いろんな計算ができます.

たとえばAチーム対Bチームの対戦では平均してAは1点,Bはその2倍の 2点を取れるとしたとき,Aチームが番狂わせで勝つ確率を計算してみます. (Aが1点でBが0点の確率)+(Aが2点でBが0か1点の確率)+(Aが3点で Bが0か1か2点の確率)+… という計算を,値がおよそ収束するまで続けます.

得られた確率は意外と高くて,18.3%です.得点力に2倍の差があっても, 5回に1回近くは番狂わせがおこるということです. また,引き分けの確率は21.2%.5回に1回ぐらいは弱いチームも 引き分けに持ち込めます.Bが順当勝ちする確率は60.6%にすぎません.

同様に得点力に2倍の差があっても,Aが平均5点,Bが平均10点を取れる場合には, 番狂わせの確率はぐっと少なくなり7.4%, 順当勝ちの確率は 88.0%です. 平均 10点対 20点なら,順当勝ちが 96.1%.

確率の問題として考えると, 得点が少ないサッカーというゲームは番狂わせが起こりやすい, ということになります.これは,実力で勝るチーム にとってはかなりのプレッシャーになるし,応援するほうもハラハラする ことになります.また,弱いチームもあきらめちゃいけないということでもあります.

サッカーは得点が少ないからつまらない,もっと点が入りやすくしたほうがよいという 声もありますが,あまり入りやすくしてしまうと,「ひょっとしたら」という期待感と 緊張感を削ぐことになるでしょう.


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