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この文章は,国立環境研究所の環境報告書(2006年版)の一部の下書き原稿です. 報告書のPDFファイルは研究所のサイトに掲載されています ( 環境報告書2006). 私の担当部分は こちら

国立環境研究所構内の自然

構内には,研究所の設立(1976年)以前からのアカマツ林や,落葉広葉樹のクヌギ, コナラなどいわゆる雑木林の木々が残っています.春の芽吹きの季節には, それぞれに違った色の新緑で目を楽しませてくれます.

研究活動の広がりとともに,構内の建物が増え,林が減ってしまいました. 以前にはときおり薮のなかで見かけたウサギやタヌキも,ここしばらくは 目にすることができません.それでも,まだいろいろな種類の鳥の姿を見たり 声を聞くことができます.

クヌギとコナラの新緑 芽吹きのころのクヌギ(左)とコナラ(右)

研究所の用地にもともと生えていた木々のほか,植栽されている樹木も数多く, 季節ごとの花や紅葉・黄葉が目を楽しませてくれます.もともと日本の温帯に はえている樹種が多く植えられていますが,外来の樹木も少なくありません. たとえば,研究所の敷地の入口から研究本館に向かっての道路は,北アメリカ原産の ユリノキの並木になっています.なお,花粉をまき散らすスギの植栽がところどころに あり,花粉症に悩む職員には評判が悪いようです.

イチョウの黄葉 ユリノキの花 ナツツバキの花
イチョウの黄葉(左),ユリノキの花(中),ナツツバキの花(右).

林のなかでは,明るい草地では見られない林床植物が生えています.春先にはキンラン,ギンラン,アマドコロなどが可憐な花を咲かせます.また,ワラビやゼンマイといった山菜も顔を出します.こうした山菜の季節や秋のキノコの季節には,これらを目当てに林のなかを歩き回る職員のすがたが見られます.

キンラン アマドコロ ワラビ
アカマツ林内のキンラン(左),アマドコロ(中),ワラビ(右).

構内では定期的に草刈りを行っています.建物の周囲は年に2回刈るところと3回刈るところがあり,林の下はおおむね1回だけ刈ります. 林内で花を咲かせている植物のことを考えると,刈ってしまうとかわいそうな気がしますが,刈るのをやめると数年のうちにうっそうとした薮となり,地面の近くはとても暗くなって,かえって多くの植物が姿を消してしまいます.

アカマツ林内 アカマツ林内の薮 アカマツ林内のようす(左).草刈りをしないと薮ができる(右).

建物周辺の草地では,例年の草刈りのスケジュールと相性がよい植物が いろいろ見られます.たとえば,冬のあいだは草刈りをしないので, 秋に種が発芽して,緑の葉が冬を越し,春先に花を咲かせるような植物には 暮しやすい環境です.フデリンドウはその例で,道沿いの草地にたくさん 見られます.ただしリンドウの花は暗いと閉じてしまうので,晴れた日に 捜すのが見つけるコツです.

草地 フデリンドウ 頻繁に草刈りをする草地(左)で見られるフデリンドウ(右).

茨城県の南部から中央部は,カシ類など常緑広葉樹の林,照葉樹林の北限にあたります. 研究所の敷地内にもそのような林を作ろうと,建設当時はまったくの裸地であった ところに,シラカシやアラカシが植えられました.かなり高い密度で植えてあるので, みな少々ヒョロヒョロとしています.林のなかは暗く,林床の植物はまばらです.

シラカシの林 シラカシ林内 常緑広葉樹の林(左)とその中の様子(右).

研究所の構内には,研究所の設立以前からの池がふたつあります.そのひとつでは, 池の縁にそってヨシやヒメガマなどが生えています.ここでは生態系の調査も 行われています.構内のはずれで人があまり来ないので,冬を越すために渡ってきた コガモの姿も見られます.

シラカシの林 シラカシ林内
5月中ごろの構内の池の様子.岸辺近くではヨシが伸びてきている. ソメイヨシノが咲き始めるころの研究本館横の池.

研究本館の近くには人工的に作られた池があります.朝早くには大きなアオサギが エサをとりに来ていることがありますが,人の気配を感じると,すぐにユッサユッサと 飛び立ってしまいます.


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