| シンポのTop page |

生態学会49回大会 企画シンポジウム「資源獲得戦略としての樹木の形づくり」 講演要旨

ヤマハンノキ当年枝の繁殖における資源的独立性と当年枝動態からみた豊凶現象

長谷川成明 (京都大学)


ヤマハンノキにおいて当年枝の雄雌花生産の有無には当年枝サイズが影響して いることが示されている。 このことから、当年枝のもつ雌雄花には当年枝上の葉で生産された光合成産物 が投資されている可能性が考えられる。 炭素安定同位体を用いたトレース実験を行い、雌雄花生産における当年枝の、 および果実成熟における1年枝の資源的独立性を明らかにした。

実験の結果、雌雄花はそのつく当年枝上の葉で生産されている光合成産物を、 果実はそのつく1年枝上にある、果実に最も近い当年枝上の葉で生産された光合 成産物を得ていた。 これらの結果から当年枝/1年枝は繁殖における資源的に独立なユニットであり、 かつ繁殖に対して主に当年に生産された光合成産物が投資されていることが 示唆された。

ヤマハンノキは2年〜3年周期の豊凶がみられるが、上記の結果からこの現象は 既存の仮説では説明できない。 ヤマハンノキの豊凶のある繁殖パターンは繁殖量を増加させる繁殖戦略との 仮説を構築し、当年枝個体群動態の視点から解析した。 当年枝個体群動態のマトリックスモデルを用いたシミュレーションの結果、 豊凶のあるパターンは一定の繁殖強度を続ける場合よりも繁殖量を増大させ 得ることが示された。 従ってヤマハンノキの豊凶は当年枝個体群の生涯の繁殖量を増大させる 繁殖戦略であることが示唆される。