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生態学会49回大会 企画シンポジウム「資源獲得戦略としての樹木の形づくり」 講演要旨

個体間の相互作用と樹冠のダイナミクス

梅木 清 (北海道立林業試験場 道北支場)


樹木は,光合成,呼吸,物質転流などの機能によって,成長し,生命を維持し,繁殖 をしている。また,伸長・分枝しながら広がり,資源獲得する空間的構造を持ってい る。枝の空間的な分布構造が葉にあたる光の量を決定し,光合成や呼吸などの機能量 を左右するなど,樹木の構造と機能は相互に関係しあっている。従って,樹木の生き 方を理解したり,成長を予測するためには,構造と機能の両方を相互関係の中で理解 する必要がある。樹木の構造・機能とその相互作用は複雑であるため,コンピュータ シミュレーションモデルの開発が必要不可欠である(樹木の構造的・機能的モデル)。 近年,コンピュータの性能の発達を背景にして,この課題に取り組む研究が色々なグ ループによってなされるようになってきた。

私は,樹木の構造的・機能的モデルを用いて,樹木集団=森林の発達を再現・予測す る事に取り組んでいる。ある程度の個体数をもつ樹木集団を扱うとき,樹木モデルの 基本構造ユニットに何を用いるかが問題になる。樹木は,枝・葉・シュートなどの繰 り返しによって形作られているが,一つ一つの枝・葉から樹木集団を作ると,年々早 くなるコンピュータをしてもシミュレーションに長時間を要してしまうからである。 そこで,もう少し高次の構造単位である一次枝(幹から直接出ている枝)を樹木モデ ルの基本構造ユニットとして選択した。

シラカンバの比較的若い林分で0.01haのプロットをとり,一次枝測定,光の空間分の 測定,一次枝の発生・成長・枯死の観察から得られたデータを用いて,一次枝を基礎 構造ユニットとした樹木+林分モデルを作った。モデルにより,光資源を巡る個体間 の競争と樹冠構造のダイナミックスが再現できた。