2004-05-13
updated on 2004-05-19
野生の植物が先々絶滅してしまう可能性がどのぐらいあるかを見積もるには, 現在の分布や個体数,近年の変化などのデータが基礎になりますが, 山野をめぐって植物の分布や個体数を調べることはそう簡単ではありません. 実際に得られるデータは量も質も限られたものにならざるをえません. けれど,たとえ不十分なデータであっても,その情報をうまく活かせば, まったくのあてずっぽよりはましな推定ができそうな気がします.
日本植物分類学会絶滅危惧植物問題専門第一委員会がまとめた 『「植物レッドリスト」(種子植物・シダ植物)の調査・判定方法と判定結果の特徴』 という文章では,全国レベルの調査の紹介とあわせて,それをもとに絶滅リスクを推定する 方法が提案されています (>横浜国大・松田裕之さんのページ内の 日本産植物の絶滅リスク評価 のなかの同文書). 松田さん は,この推定方法を C と Mathematica で実装しています (>説明とプログラムコード).
人前でのデモや簡単な実習などに有用かもしれないと思って, おなじことを Java で実装してみました.Java のアプレットなら,OS を問わずにブラウザで動かせます ……と思ったんですが,最近の IE で動かすには,工夫が必要でした.詳しくは最後に(※).
IE で動かすのに苦労してあきらめかけたとき, Delphiでも書いてみました.こちらは Windows 限定です. ダウンロードしたファイルは,そのまま実行するだけです.
計算には, 生物多様性センターのページで公開されているデータが 利用できます (新RDB種情報検索). たとえば, ヒメハナワラビのデータ でためしてみます. このページの右上にある,植物RDB現地調査の集計結果が必要なデータです. これを見ながら,計算のページの左上のところにそれぞれの株数が生育しているブロック (1/25,000の地図1枚分)がいくつあるかを入力します (画面:Java版,Delphi版,赤丸に注目). また,最近10年ほどでどれだけ個体数が変化したかについても,該当するブロック数を入力します (画面:Java版,Delphi版). どちらも,なにも入力しないとゼロを入力したと見なします. プログラム中では,現在の株数を出発点にして,各レベルの変化率を それぞれの頻度に応じた確率で選んで,10年ごとの株数をブロックごとに計算していきます. 全部のブロックで一株もいなくなったら絶滅したことになります.
個体数の変化率を決めるところで乱数を引いているので,計算するたびに結果は 違ってきます.何度も繰り返して計算して,○○年めまでに絶滅する可能性が 何パーセントぐらいあるかを調べます. 繰り返しの回数を入力してから (画面:Java版,Delphi版, この場合は100回繰り返し), 「計算」というボタンをクリックすると,株数の変化のグラフが描けます (最終的に絶滅した場合は赤,生延びた場合は濃い青で描画しています). また,グラフの下には,10年ごとに,その時点までに絶滅してしまったケースの 相対頻度が表示されます (画面:Java版,Delphi版). この例では,50年後までにはほとんど絶滅しないが,100年後までには 50%ほどの確率で 絶滅していることになります.
個体数や変化率を変えて計算するときは,まずリセットボタンを押してください. リセットボタンを押さない限り,試行はどんどん積算され, 絶滅確率もそれまでの全部のデータにもとづいて計算されます.
計算方法の詳細は もとの文書 を見てください.さまざまな仮定を置いて計算していることが分かります. それぞれの仮定の妥当性や,その仮定が成り立たない場合にどのぐらい推定結果が 影響されるかなどは検討が必要でしょう.
※東大海洋研の勝川さん さんから,わたしがコンパイルしたアプレットが動作しないのは MSのJavaとSunのjavaの新しいバージョンとは互換性がないためで, IE互換にするためには古いバージョンのVirtual machine をターゲットにする必要があるとの 情報をいただきました.ありがとうございます. それでも,なぜかここ(COOL ONLINE)に載せて IE で見ようとするとだめ.アプレットが動きだしてくれません. cool と IE6 の組み合わせだとだめだという,なんとも不思議な現象です. やむをえず,アプレットだけ別の場所に載せてあります.