遺伝的なばらつきを与えた場合,環境の勾配に対応して,そこに生育する 木の遺伝的な性質にも勾配が生じます.3種を込みにして書いた,位置 (これまで同様,長方形の林の長い辺に沿っての)と木の性質との関係が下図です. 温度環境そのものも実線で示してあります.これは温度を変化させる前の 状態です.
おおよそ,それぞれの場所に,その場所の環境を得意とするような 性質の木が分布していることが分かります.温度を変えずにさらに長時間シミュレーション を続けると,この対応関係はよりはっきりしてきます(下図).
次に,温度環境を変えてから400年後の林について同様の図を書いてみました. それぞれの位置で,新しい環境にあった性質の木へと置き換わりつつあるけれど, まだその途中,といった感じです.
最後に,温度環境を変えてから1200年後の図です. まだ不完全ですが,だいぶ新しい環境に適応してきたようです.
環境変動にあらがって居座る樹種では,その樹種のなかでも新しい環境に 比較的適した個体が残り,子孫にもその性質を伝えることで,いっそう 旧来の分布域を明け渡しにくくなりそうです.
遺伝的な性質が置き換わっていく速度は,そのような遺伝子を持った種子の 移動や,花粉の移動に依存します.種子や花粉の移動距離が大きいなら, より速く遺伝的な適応が起こるでしょう.