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2003年11月11日,東北大学でのセミナーの要旨

長い枝・短い枝の役割分担を樹形モデルを使って考える

竹中明夫(国立環境研究所)


木は空間に枝を伸ばし,そこに葉をつけて光を受けとっている.木の地上部の3次元構造 は光を受けとるための装置と見ることができる.機能と結びついた構造には,効率よ く機能を果たすという点で合理性があるはずである.そうした観点から,木の構造に パターン(でたらめでない,なんらかの傾向や規則性)を探る研究はこれまでにもい ろいろ行われてきた.セミナーの前半では,このような研究をレビューしながら,さ らに研究を発展させるために必要なことは何かについて考える.

ところで,枝先のスケールで見られるパターンのひとつに,長枝・短枝の分化がある. 長枝はふつうに伸びる枝,短枝はほとんど伸びずに葉をつける枝である.イチョウ,カ ラマツのようにはっきりとした分化がみられる樹種も多いが,明瞭な二型ではなくとも, 長い枝と短めだが葉は何枚も付ける枝の両者を作る樹種は多い.

長枝と短枝,あるいは長枝的枝と短枝的枝をあわせ持つことは,空間獲得のための骨格 作りと,獲得した空間のなかでの葉の展開という役割を分担していると見ることができ る.こうした分業は,個体全体にとって効率のよい受光体制作りにつながるものとも言 われているが,定性的な仮説にとどまっている.

そこで,ホオノキを材料にして樹形形成プロセスをコンピュータシミュレーションによ って再現し,枝の伸びかたに応じたコストと機能を評価した.枝が長枝的に伸びつづけ る場合と,一部が短枝化する場合のそれぞれどのような樹形が形成されのか,また,ど れだけ支持器官作りのコストを必要とするのか,受光機能はどのように変化するのかを 定量的に見積もることを試みた.セミナーの後半では,このモデル化の過程と仮想実験 の結果を紹介する.


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