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CanopOn 2 関連の補足情報

Updated on 2021-08-29
Updated on 2009-01-30


2021年現在で利用可能なカメラ:RICOH THETA シリーズ

画角180度で丸い画像が撮れる全周魚眼(ないしは円周魚眼)レンズで、手軽に使えるものが、 いつのまにやらほとんどなくなっていました。 用途が限られるレンズなのでいたしかたなく、CanopOn2も静かに役割を終えるのかなと 思っていたのですが、東京大学の日浦勉さんから、RICOHの THETA シリーズのカメラが使えるかもというという情報をいただきました。 教えていただいた論文はHonjyo et al. (2019)です。

このカメラは、スマホのような四角いボディの両側に超広角のレンズがついています。 それらに写る画像をカメラのなかで合成し、カメラを中心に360度の画像が作られます。 作成される画像は正距円筒図法です。 カメラの傾きをカメラ自身が検知して、画像の上辺がぴったり天頂方向になるよう調整されるのが すごいところです。 この画像をそのまま見るよりも、 ソフト的な処理でバーチャルリアリティなどさまざまに加工して楽しむことを想定したカメラです。

Honjyo et al. (2019)では、画像の上半分、地平線よりだけを使って等距離射影や等立体角射影の円形画像を作成すると、 全周魚眼レンズで撮影した場合と同様に空隙率の解析に使えることを確認しています。 これはすばらしい。この論文を参考に、等距離射影の画像を作成する 変換プログラムを書いてみました。CanopOn2 ユーザはデータ解析などで R を使っているかたが少なくないと思い、 Rで実装しました。 使い方はスクリプトの最初に書いてあります。Rの作業ディレクトに変換したいファイルをいくつでも入れて、 このスクリプトを実行するだけです。複数のファイルがあれば、それらを一括して処理します。 作成される画像の大きさなど、いくつかの設定はスクリプトの最初のほうに書かれています。

スクリプトのほか、テスト用にTHETA で撮影した画像ファイルと、確認用にこれを変換したものを用意しました。

本スクリプトは、オープンソースソフトウエアでよく使われる MITライセンス に従って公開します。 著作権表示を残すという条件のほかは、無条件に扱ってよい(自由に使用、複写、変更、結合、掲載、頒布、サブライセンス、 および/または販売する権利を含む)、ただし作者は一切の保証をしない、というものです。 いかようにでもお使いください。


全周魚眼レンズ(この情報は 2009 年現在のものです)

コンパクトなデジカメで使える魚眼レンズには,ニコンの Coolpixシリーズに装着できる 等距離射影方式のフィッシュアイコンバータFC-E8, FC-E9  (等距離射影) がありましたが,すでに製造を終了しています.残念.中古品は手に入るかもしれません. これに相当するものとして, 有限会社フィットの UWC-0195 (等距離射影)というものがあるようです.

デジタル一眼レフ(撮像素子がAPS-Cサイズ)に装着して, 円周魚眼画像を撮影できるレンズとしては, シグマ 4mm f2.8 EX DC(等立体角射影) があるようです.

いずれも私は手にしたことがありません.詳しくはご自分で調べてください.


用語の定義

天頂角
天頂方向となす角度.地平線の方向が90度.
方位角
方位を示す角度.CanopOnでは,南方向を0度,東回りを正の方向としている.
Site Factor
ある場所に到達する光の量を,光を遮るものがなにもない場所に到達する光に対する 相対値で表したもの. 瞬間的な光量についても,ある期間の積算量についても計算できるし, 散乱光だけについても,散乱光と直射光を合せたものについても計算できる. したがって,Site factor という語を使うときには,どの時間スケールで, どんな光についてのものか,明確にする必要がある.
Diffuse site factor
散乱光だけについて計算した site factor.
SOC (Standard overcast sky)
天頂方向が地平線方向より3倍明るいと仮定する散乱光の光源モデル. 天頂角 x の方向の空からの光の強さ I(x) は I(0) * (1 + 2 cos(x)) / 3 で与えられる.I(0) は天頂角ゼロ,すなわち天頂方向の光強度.
UOC (Uniform overcast sky)
空全体から均一に散乱光が来ると仮定する光源モデル.
×相対照度
手ごろな光測定装置が照度計(人間が感じる明るさをはかる.単位は Lux) ぐらいしかなかったころ, 植物の群落の中と外の照度を測定して,その比率を相対照度と呼んでいた. 植物が利用できる光の量という観点からは,照度よりも光量子密度のほうが適当であり, 植物生態学,農学,林学などでは光量子計を使うことが一般的になっている. それでもなお,群落内の光量の相対値をすべて相対照度と呼んでしまう慣習が一部に残っている. 不正確な表現なので,避けるべきだろう.

精度に影響するあれこれ

CanopOn 2 の解析精度に影響を与える要素はたくさんあります. これらをじゅうぶん念頭に置いたうえで,写真の撮影や解析を行ってください.
レンズの中心と天頂方向とのずれ
カメラを設置する際に,目分量に頼らずに水準器を使ったり錘を垂らしたりすれば この誤差は小さくできる. 多少のずれは,散乱光の透過量を見積もる際にはそれほど大きく影響しないが, 太陽の直射光の透過を見積もる際には大きく影響する可能性がある.
方位のずれ
カメラに方位を示す目印を写しこむ際に,この方向がずれていれば,そのまま解析に影響する. とくに太陽の直射光の透過を見積もる際に大きく影響する可能性がある.
磁北と真北とのずれ
コンパスは,真の北ではなく磁北を指す. 磁北と真北とのずれは地域よって異なる. とくに太陽の直射光の透過を見積もる際に大きく影響する可能性があるので注意する. 国土地理院のページで,地磁気の分布を調べることができる. > 便利なプログラム・データ の地磁気値のところ).
撮影時の露出
白黒ニ値化の基準は調節できるが, 日を受けた葉が白く飛んでしまうなどして, 写ってないものはどうしようもない. なるべく曇りの日に撮影するのがよい. あまり朝早くや夕方遅くで空の明るさが極度に偏っている写真もやっかい.
白黒判定の基準の設定
判定基準しだいで空隙率は大きく変化する. カラー画像と白黒画像とをじゅうぶん見比べながら適切な基準設定をする必要がある. 人間は,高度のパターン認識能力をつかって,どこが空でどこが障害物かを判別できる. この能力をめいっぱい使って,空が白,障害物が黒に判定されるように基準を決める (→白黒判定基準の設定を自動化するには,パターン認識能力までプログラムに持たせなければ ならず,とてもむずかしい).
レンズのゆがみ
「○○射影方式」と称しているレンズでも,厳密にその射影を実現しているわけではなく, ある程度の誤差があるらしい.上に並べた誤差要因に比べて特に大きいものではないだろうと (あまり根拠なく)思って,CanopOn2 では特に補正などしていない.

参考文献

Anderson, M.C. (1964) Studies of the woodland light climate I. the photographic computation of light conditions. J. Ecol. 52:27-41

Takenaka, A., Inui, Y., and Osawa, A. (1998) Measurement of 3D structure of plants with a simple device and estimation of light capture of individual leaves. Funct. Ecol. 12:159-165.

Muraoka, A., Takenaka, A., Tang, Y., Koizumi, H. and Washitani, I. (1998) Flexible leaf orientations of Arisaema heterophyllum maximizing light capture in a forest understory and avoiding excess irradiance at a deforested site. Ann. Bot. 82:297-307.

Tsuyoshi HONJO, Tzu-Ping LIN, Yuhwan SEO (2019) Sky view factor measurement by using a spherical camera Journal of Agricultural Meteorology Vol. 75 Issue 2 Pages 59-66 https://doi.org/10.2480/agrmet.D-18-00027


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