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2006年 8月


2006-08-31

ヒメシャチホコの幼虫 を教えていただいたときに,世の中には蛾の幼虫が好きな人がいるのかと, いたく感銘を受けた.それ以来,毛虫,芋虫のたぐいを見ると,一応は なんの幼虫だろうと気にするようになった.今朝,サトイモの葉の上にいた芋虫は, 調べてみたらセスジスズメの幼虫らしい. ネット上に 観察日記 があった. この日記が載っている 晶子のお庭は虫づくし〜虫(昆虫)の生態図鑑〜 はなかなか充実してる.そして 作者にちょっとびっくり.

うちのサトイモの葉を食べていたセスジスズメは,終齢のひとつ前まできてるし, 一匹しかいなかったので,おまえが食べるぐらいの葉はあるし,蛹になるならなりなさい, と放っておくことにした.

おととい書いた トウガラシの謎は, 風散布説を唱えた方 からの情報で解明. 哺乳類にとってはトウガラシは辛い (かどうか知らないけど,食べるのを避ける)が,鳥には辛くない (かどうか知らないけど,ためらわずに食べる). また, そしてトウガラシの種子がたしかに鳥に運ばれていること, 鳥が運んだ種子はちゃんと発芽すること, 鳥はトウガラシにとって暮しやすい場所に種子を運んでくれること, などを示した研究もある (Tewksbury and Nabhan (2001) Directed deterrence by capsaicin in chillies. Nature 412: 403-404). ひとつ賢くなりました.

2006-08-29

先週のシンポジウムのあとの飲み会で,シシトウの天ぷらを食べたら大当たりだった. 激辛.家でつくっているシシトウも,少なからぬ比率で激辛がまじる. それでちょっと収穫の手が鈍ると, 真っ赤に熟す.これはこれできれいだ.

ところで,トウガラシはなぜ熟しても辛いのか.赤くなって目立つからには,鳥などに 来て欲しいのだろう.でも,鳥に食べてもらって散布して欲しいなら, 熟したところで甘くなればいいものを. 飲み会のときには,トウガラシの種子は風散布なんじゃないかという説も出た. たしかに種は風で飛びそうではある.それとも,鳥には辛さは感じられないのか? ほんとのところ,どうなんでしょう.

2006-08-25

裏庭の,高さ50センチほどのサンショがキアゲハの幼虫に喰われて丸裸になった. エサを喰いつくしてしまった幼虫は立ち往生.数日のうちに姿が見えなくなった. 鳥に喰われたか.アゲハの親としては,幼虫が蛹になれるところまで食草が 確保できるようにしたいだろうけど,植物の個体サイズ,近くに他の食草があるか, 他の親が卵を産みつけてないかなど,いろいろ関係してきてむずかしそうだ. どんどん葉をつくる草の場合,芽まで食べてしまうかどうかも重要だ. 芽をたべたら新しい葉の供給がストップする. ふむ,いろいろおもしろい問題がありそう.

いっぽう,裸になったサンショのほうは,1週間あまりのうちに芽がゆるんで, 新しい葉がでてきた.秋も深まってからこんなことしたら,葉を作るだけ損だ. いつごろまで葉の作りなおしをするかがサンショの考えどころだ. …などとこちらが考えているうちに,キアゲハはさらに卵を生む.今朝見たら, サンショの新葉のあちこちに一齢幼虫がいた.全部で32匹みつけて排除した.

アゲハはサンショのようなミカン科の植物だけでなく,セリ科の植物もお好きである. 庭の畑のすみに植えたアシタバをむしゃむしゃと食べている終齢幼虫を発見( 写真). こちらもつまみとって( 写真)となりの空き地に投げすてた.

昨日のシンポはなかなか楽しかった.お世話いただいた 黒田さんに感謝.

2006-08-23

職場的にはもう夏休みの香りはなく,会議だのなんだの.きのうは24人の研究提案を 聞いて採点した.10人ぐらいに質問したかな.私は 質問するのは好きです.

明日は東京で,遠洋水研主催のシンポジウム「生物資源の数理モデリング」 (> プログラムと要旨のPDFファイル). 発表してきます.

2006-08-22

なおも特別研究員の話の続き.ふつうの特別研究員(形容矛盾だ)とは別に, 海外から日本に来る人用の制度もあって,別の時期に審査する.たしかそのときの 推薦状だったと思うけど,申請者は自分が指導した学生のなかでどのぐらいの レベルかが書かれていた.こういう書き方だと,みんながみんな 「分野の中心的な研究者になるものと確信」したりできなくなる. でも,同じ研究室のメンバーとつねに比較されてるという意識は, ずいぶんストレスになりそうだ.

2年のあいだ,いろいろな申請書を読んだ. ぜひ応援したい,将来が楽しみだ,と思えるような申請書を読むことは楽しかった. でも,正しい評価ができてると確信できないままに,申請者の将来を左右するような評価を つけていくのは,楽しい仕事ではなかった. もういいや.

…と言いつつ, きょうは職場の研究所内での奨励研究のヒアリング. こんなにいろんな分野 の人たちの話を聞いて評価する.話を聞くのはいいけど, 点をつけるのはほんとに楽しくない.

2006-08-21

遅めに種子をまいたキュウリの苗を庭の畑のすみっこに植えておいたら, ちゃんと育って実がついた.キュウリの写真を載せてもおもしろくないので省略.

職場の広報誌 の巻頭言の原稿を書きました.題して 「 君の名は 」. このまま掲載されるわけではないですが,いちおう載せておきます. 巻頭言っぽいことを書かないといけないが,巻頭言くさい文章は書きたくない. そう思って苦労した結果,「巻頭言くさいことは書きません」というポーズが見え見え という,ありがちなパターンに陥った気がします.

特別研究員の書類審査の話を,覚えているうちにもう少し. どの申請にも推薦書がついているが,それを読むかぎり,みんながみんな, 自力で独創的な研究計画を立案し,たぐいまれな粘り強さで研究をすすめ, セミナーでは積極的に発言し,後輩の面倒見がよくて人望があり, 将来はその分野の中心的研究者になると確信してしまうような人ばかりで, 参考にならなかった.たまにストーリー性のある推薦書があって楽しかったが, だからといって申請者の総合評価をあげるということにはならない.

2006-08-19

午後4時すぎの研究室の気温は 32.5度. これなら扇風機でじゅうぶんすごせる.

土松さんに 期待されている ようなので, 特別研究員の審査の話をもうちょっと続けます.

きのうも書いたように, 専門外の読者への配慮がない文章は当然×.詳細にすぎる文章も読むのがつらい. なんせ100人以上の申請を読むし. じょうずに要約的な文章(段落ごとのエッセンスとか,全体のエッセンスとか) が埋めこまれた文章だとありがたい. 文章じゃなくて内容で評価してくれと言われるかもしれないが, 読みにくくて理解できなければ積極的に○はつけられない. それに,自分をじょうずにアピールする能力がないと 研究者としては困る.だから,文章が不明瞭というのは 1や2をつける十分な理由になる.

もちろん,シンプルすぎて,やる気の表明だけのような研究計画でも ○はつけられない.

専門が近い人が委員になってるとラッキーかもという声もきくが, そうでもないと思う.情実で点をつける人はめったにいないだろうし, それ以上に, はったり的な部分や方法の苦しい部分が分かっちゃうということもある.

この項続く……かも.

2006-08-18

ちょっと前の写真ですが, 庭で咲いたアサガオ. 今もどんどん咲いてます.

特別研究員の書面審査の話の続き.送られてきた応募書類を5段階で評価する. 1から5の配分比率はきっちり決っている,みんな優秀だから5だ,とはいかない. また,低い評価,高い評価をつけた人にはその理由も書く. 100人分ともなると,全部を並べて順位づけなどできないので, ひとつ読むごとにとりあえずの評価をメモする.最後に,決った比率におさまるように調整する. 競争率から考えて,少なくとも4以上でないと採択はむずかしいだろう. 減点理由がないだけでなく,積極的に○をつけたくなる申請でないとね.

じゃ,どんな申請に○をつけたくなるか. かなり専門外の分野の申請も送られてくるので, 正直なところ,すべての研究計画について学問的な意義をきちんと評価するのは無理だ. 門外漢が読んでも分かりやすく,かつ訴えるものがあって, ぜひ応援したいと思うようなものに5をつける.もう一息なのは4. じゃ,どんな申請書を応援したいと思うのかというと… 説明がむずかしいな.

2006-08-16

しばらく前に,生態学会の 会長メッセージ のなかで,和文の学会誌の編集委員長を公募してはどうかという話が出ていたが, ほんとに公募した( 募集要綱). 野心的な試みだが,応募する人はいるだろうか?

先日,特別研究員審査会専門委員の,二年間の任期満了のお知らせが日本学術振興会から届いた. 任期が終ると委員は公表される.というわけで今だから書きますが, 去年の8月に, 「人の○○を△△してばかりいるうちに,自分も○○を※※したくなって…」 というわけの分からないことを書いたのは, 「人の研究計画を評価してばかりいるうちに,自分も研究計画を立案したくなって…」 のことでした.このときは107人分の特別研究員応募書類を読んで評価した. 書く方も大変でしょうが,これだけの書類を読むのも大変です. そのときに感じたことは,また後日.

2006-08-11

再来週に東京で 第2回「生物資源の数理モデリング」シンポジウム(PDF) というものがある. 「なかなか充実してますねぇ,行こうかなぁ」と人が言ってるのを聞いて, 一瞬,私も勉強しに行こうかなあと思ったところで気がついた.自分も演者だ. 要旨を書けというメールの指示も見落としていて, やはり演者の久保さんの 業務日誌 で気がついた. 締め切りは来週月曜日だが,月曜日は休みをとるので,今週中に送らないといけない.

私の話の内容は 生態学会での話 ほとんどそのままですが,その他の話はそれぞれ勉強になりそう. 会場係が勢い余って300人収容の部屋を予約されたとかで,宣伝するようにとの指示もいただく. がらがらだと,お世話をされている 黒田さん が怒られてしまうそうですので. ご興味がおありの方はぜひおいでください.

2006-08-09

きのうの帰り道,空は夕焼けがみごとだった( 写真 ). 今朝は久しぶりにしっかりとした雨が降っている.雨具を着て自転車で出勤. 雨に打たれながら走るのはわりと好きだ.

生態学会の大会にむけて,シンポジウム企画の受付けフォームとCGIプログラムを書いてみた. 今までは,いろいろな締め切りを何月何日とだけアナウンスしていたので, その日は夜の12時まで待機して,日付が変わったところで閉じる作業をしていた. これはこれで楽しいのだが,私にはかなり非日常的な夜更かしだ. 締め切りを午後5時とアナウンスしておけば,こんな夜更かしをしなくてよい. でも,そもそも締め切り時刻になったら動作をストップするように 受付けCGIプログラムを書いておけばいいことに気がついた. コンピュータにだってできることを人間がやることはない.

知ったかぶりに疲れて,きのうはひとつ,これまた知ったかぶりが必要そうな仕事を ひとつお断りしてしまった.

2006-08-03

デジカメで撮った写真は撮影日ごとにフォルダにつっこんでいたが, いろいろなプレゼン用に使う写真を掘り出すのが大変になってきた. 今のうちに整理しとこうと思い立ち,テーマ別にまとめてみた. おかげで,どのフィールドにいつ行ったのかも分かるようになった. 渡良瀬は去年の暮れから7回行ったとか,屋久島にはこの3年間で5回行ったとか. 九州大学新キャンパスには9回も行ってる.すっかり忘れてた.

組織では,いわゆる上司は部下の所業に責任を負う. 「部下が勝手にやったことです」とか,「私には分かりません」とかは, 少なくとも対外的には言えない. とはいえ,何十人の仕事にもれなく目をくばり,すべてを理解するのは無理だ. 外への説明では,知ったかぶりをせざるを得ないこともある. でも,研究者が知ったかぶりをはじめたら終わりだ. その場をごまかせばよいという姿勢は研究とはほど遠い. そんなポストに長居をするのはとても危険な気がする.

2006-08-02

きのうは,異様な涼しさの中,渡良瀬遊水地へ. 写真はヨシ原の中で高さごとの光環境を 測定している様子,といってもまったく視界がきかないので, 3メートルも離れると何をやっているのかさっぱり分からない. もう少し開けたところでは ミソハギ が咲いていた.

岡本真さんから 『 これからホームページをつくる研究者のために』を送っていただいた. わたしのページ内の文書が転載されている. ぱらぱらと見ただけだが, 「これからホームページをつくる」と決めた研究者にも参考になるが,むしろ 「これからホームページをつくろうか迷っている研究者」の背中を押す本ではないかと思う.


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